短編小説の書きかたっていうか、なんか雑感とか


 昨日の深夜まで白目剥きながら読んで講評つけてってやっててなんとか122作品すべてに講評をつけ終えたんですけれども、あれ~モモモ大賞ってここまで大変だったっけ? って思ったら、前回の参加数が60くらいなので単純に倍くらいになってるんですよね。そりゃあ白目も剥くわけだ。初参加でいきなりこの数をやらされる羽目になったチャンラノと眼鏡先生はほんとご愁傷様ですという感じで、次からはちょっとやりかたを考えないといけないかもなぁって思ってます。最低限、参加作品は必ず誰かが読んで講評をつけるというのは維持したいので、ジャンルごとに担当の評議員を決めて一次選考をしてもらって、そこを抜けてきたやつを全員で読むとかそういう風にしないと、ちょっとこれは続けてられないなって感じです。まあなんとかやっていきましょう。

 で、さすがのわたしでもこれだけの数のいろいろな短編小説をガーッ! と読んだのなんて初めての経験で、途中からほとんどただの読む機械みたいなトランス状態になっていたんですけれども、そうするとなんかこうふわっと見えてきたものがあったのでいちおう書き留めておこうかなとかそういう感じです。なおこのブログは適当に思いついたことを書き散らすぞ~というコンセプトなので記事としてしっかりまとめるつもりとかさらさらないからあまり真に受けるものでもないし、飽くまで2万字程度の短編小説に限った話で長編の場合はまた別のメソッドがあると思います。


1:主人公を行動させよう!
 わりと多かったんですけれども、語り部がただ出来事を観測して叙述しているだけの存在になっていて、ぜんぜん出来事に参加していないというパターン。どんなに派手なことが起こっても、主人公がただそれを眺めているだけだと読者のほうはさらに物事を眺めているだけの主人公を眺めるだけということになって、もうフーンってなってしまいます。もちろん物語にルールはないし色々なやり方があるとは思いますが、基本的には「主人公がなんらかの問題に主体的に取り組むことで解決する」という形式になっていたほうがそれっぽくなります。

2:短編小説の主役は物語!
 長編だとダラダラとした日常パートもキャラ萌えでついつい読んじゃうみたいなのはわりとあると思うんですけれども、短編の場合は一瞬で読者を引き込まないといけないので、キャラクターありきのダラダラとした話はあまり向いていないように感じました。飽くまで主役は物語の枠組みで、キャラクターは物語のために動くスタッフだと思ったほうがいいでしょう。当該の物語には関係のない「うちの最高にかわいいこの子を見てくれ~~!」という欲求はちょっとしまっておいたほうがいいと思います。

3:ボリューム感を把握しよう!
 1~2万字というボリューム感をちゃんと掴めていない人が多かったなという印象。無理に1万字に膨らませたものはスカスカとした印象だし、逆に無理して2万字に収めたものは窮屈そうで、こっち削って逆にこのへんを盛ったほうがよかったんじゃね? みたいなのがけっこうありました。それぞれのシーンが物語の中で果たしている役割というのを考えて、無駄な部分は絞るか削るかして、すべての要素が物語を前に進め続けているのが理想です。

4:単独で成立するコンテンツに仕上げよう!
 これもわりと多かったんですけれども、単独で成立してなくて物語を理解するために別の(たとえばクトゥルフ神話とか)前提が必要になっているものは評価が低いです。キャプションだけに必要な設定が書いてあって、本文にはそれが埋め込まれていないというのも問題です。キャプションは飽くまでキャプションですから、読み飛ばして本文をいきなり読んだとしても大丈夫なようにしておきましょう。別の自作のスピンオフっていうパターンもあって、別にいいんですけれども、そっちを読んでいないことには理解できないみたいなのは困りますから単独の本文にその物語に必要な前提は不足なく埋め込んでください。

5:ロケットスタートを心がけよう!
 短編の場合は、もう1行目から動き出すのが理想っぽい。なんの話なのかが分からないまま文を読み進めるというのはわりとストレスになるので、最低限「これからこういう話をしていきますよ~」というのは物語のかなり序盤、できれば1行目で宣言されているのが望ましいです。これは普通にお喋りしているときも同じですね。まず「そういえばアレなんだけどさ~」って、これから何について話すかを宣言するじゃないですか。宣言っていうと大げさだけど、つまりはそういうことです。

6:主人公を変化(成長)させよう!
 もちろん物語にはいろいろなパターンがあるのでこうだと断言できることなんかなにもないから「ワイはワイの小説を書くんや!」っていう人は無視してくれていいんですけれども、とにかくまずはちゃんとしたエンタメ短編小説を書き上げたいっていう人はこれを意識すると強くなると思います。主人公がなにかを決断し、主体的に変化して、それによって問題を解決するというのが強力なひとつのフォーマットです。この落差が大きいほどカタルシスが大きくなるので「こういう主人公像を描きたい!」というのがあるのならば、それとは真逆の状態からスタートすればよいということになります。

7:読者にお説教しようとするのはやめよう!
 もう論旨の合ってる合ってないとかまったく関係なしに、人間、お説教臭いものには反射的に反感を覚えるので、読者にお説教しようとするのはエンタメ小説としては最高に悪手です。強く伝えたいと思うメッセージや主張があるのならば、どうすればそれを無理なくスンと読者に見つけさせることができるかを考えなければなりません。あなたが読者に言うのではなく、読者が自ずから見つけるのです。底の浅い社会風刺がしたいなら小説よりもツイッターのほうがよっぽど向いていると思います。

8:あいつらはバケモノだから真似しても無駄!
 参加者のレベルが上がってきていて一般文芸でも戦えそうな水準の文章力を持った人もちらほらといるのですが、はっきり言って例外的な存在なので真似しても無駄です。そういうのに憧れたり、図らずも雰囲気に呑まれてしまったりするのは分からなくもないのですが、ないものはないのですから文章力だけで魅せつけるような話を書くのは諦めましょう。自分の手持ちの武器をしっかり見つめ直して、その組み合わせでワンパン入れにいってください。KUSO創作勢は「せめて一太刀」の精神を忘れてはダメです。
 

 いまパッと思い出せるのはこんなところかな? 言ってわたしもこれらをちゃんとできているかというとそうでもないんですけれど、読者という立場で短編を120本以上読んだというコンディションから出てきた雑感なので、ある程度は意味のあるものだと思います。各自、参考にするなり笑い飛ばすなり好きにしてください。炎上させるのは……やめようね!


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